外壁には寿命があります。
外壁を定期的に塗装し、メンテナンスをすれば、寿命を延ばすことはできます。
しかし、必ず寿命の終わりはやってきます。
寿命を迎えてしまった外壁は塗り替え工事をしても、数年ほどしかもちません。
それではどうすればいいのでしょうか?
寿命を迎えた外壁は、 「張替え」 もしくは 「重ね張り(外壁カバー工法)」 をして、大々的にリフォームすることになります。
目 次
1.外壁の寿命はどのくらい?
代表的な外壁材の平均的な寿命をご説明していきます。
【窯業系サイディング】
窯業系サイディングとは、セメントを主原料とし、そこに繊維質原料を加えたものです。
デザインやカラーのラインナップが豊富で、シンプルな柄から雰囲気にこだわったタイルやレンガなどいろいろ選べます。
窯業系サイディングは新築から約10年ごとに外壁塗装を行うことが一般的です。
約30年以後となると、塗り替えを行っても持たなくなりますので、外壁の 「張替え」 か 「重ね張り(外壁カバー工法)」 が必要となります。
【モルタル外壁】
モルタルとは、砂とセメントと水を混ぜた半固形の壁材です。
コテで塗りつけていくため、コテの使い方で壁にいろいろな凹凸の模様をつけることができます。
モルタルだけでは防水性がありませんので、外壁塗装で防水をします。
モルタル外壁では新築から約10年ごとに外壁塗装を行うことが一般的です。
約30年以後は、年数の経過とともに脆くなってしまいますので、こまめなクラック補修が必要になることが多いです。
「モルタル外壁は手入れをすれば半永久的に持つ」
と言う人もいますが、クラックをただ埋めるだけですと美観が悪くなります。
美観を保つためには、
・クラックを適切に補修する
・コテやリシンガンによる吹き付けで模様をつける
・補修部とその周辺だけタッチアップするか、あるいは1面~全面を塗り替える
この3工程が必要になってきます。
工程が増えるほど、補修費用は上がってしまいます。
【金属サイディング】
金属サイディングとは、柄付けされた金属板と断熱効果のある裏打材からなる外壁材です。
金属サイディングのうち最も一般的なものは、ガルバリウム鋼板(アルミと亜鉛でメッキされた鉄板)です。
新築から約10年ごとに外壁塗装を行うことが一般的です。
約30年以後となると、塗り替えを行っても持たなくなりますので、外壁の 「重ね張り(外壁カバー工法)」 が必要となります。
ここまで、代表的な壁材3種類について説明してきました。
外壁の寿命は外壁材や、環境によって変わってきますが、サイディングの耐用年数はどれもおよそ30年です。
日本の家の平均寿命は約27年と言われています。
外壁材の寿命が約30年ということを考えると、外壁材がダメになってくると、家全部が傷んでいるように感じて、いっそ建て替えようと考える方が多いのかもしれません。
また、日本は戦後に社会も生活スタイルも激動してきました。「古い家ではなく、新しい生活スタイル・時代に合った家に住みたい」 というニーズもあったのでしょう。
しかし、外壁は寿命がきても、 「張替え」 や 「重ね張り(外壁カバー工法)」 をすることで生まれ変わります。
外壁に寿命はありますが、外壁の寿命はお住まいの寿命ではありません。
これまでは大量生産、大量消費、変化の時代でしたが、今、そしてこれからは、ゴミを減らし自然環境と共存する循環型社会の時代です。
お住まいも、 「古いものは壊して捨て、新しいものを作る」 のではなく 「悪い部分を修繕して住み続ける」 時代になっているのではないでしょうか。
もちろん壊して新しくするよりも、修繕して使うほうが、費用面でも低く抑えられ、環境にもお財布にも優しいです。
次からの章では、寿命が来てしまった外壁をリフォームする2つの方法 「張替え」 と 「重ね張り(外壁カバー工法)」 について説明していきます。
2.張替え、重ね張りのメリットとデメリット、注意点など
外壁が耐用年数を超えた場合、最適なリフォームは外壁の 「張替え」 、もしくは 「重ね張り(外壁カバー工法)」 です。
「張替え」 では、古い外壁を撤去し、新しいものへと取り換えます。
「重ね張り(外壁カバー工法)」 では、古い外壁の上から新しい外壁を張ります。
どちらの方法でも外壁は新しくなり、美観や機能性が蘇ります。
それぞれのメリット・デメリットや注意点を詳しく見ていきましょう。
2-1 「張替え」 のメリットとデメリット
但し 「張替え」 で知っておいていただきたいのが、元の外壁によっては 「張替え」 ができないことがある、ということです。
モルタル外壁では 「張替え」 ができません。
モルタル外壁の場合、モルタル部がその下の金網・防水紙部分と一体化しています。
そのため、外壁を解体しようとすると、それらもすべて解体されてしまいます。
またモルタルは、半固形状の材料を塗り付けて施工するものなので、 「張替え」 という工法には当てはまりません。
モルタル外壁の場合のリフォームは 「重ね張り(外壁カバー工法)」 になってきます。
2-2 「重ね張り(外壁カバー工法)」 のメリットとデメリット
モルタル外壁では施工できない 「張替え」 と違い、
「重ね張り(外壁カバー工法)」 は基本的にどの外壁にも施工することができます。
しかし元の外壁の劣化があまりに大きい場合は施工できないこともありますので、ご注意ください。
2-3 外壁リフォームは重量増に注意!
「せっかく大掛かりにリフォームするなら、今までとは全く違う外観にしてみたい!」
とお思いになる方もおられるでしょう。
ですが、ちょっと待った!
外壁の 「張替え」・「重ね張り(外壁カバー工法)」 は、重量の増加に注意しなくてはいけません。
家は使用する建材の重さを計算して、耐荷重以内になるように設計されています。
もし元の外壁の材料よりも、ずっと重い外壁材に変更してしまえば、耐荷重を超えてしまい家の基礎が重量負荷を支えきれなくなる可能性があります。
少しくらい耐荷重をオーバーしても、すぐに家が壊れることはありません。
しかし大きな地震がきたら、どうなるでしょうか?
せっかく新築のときに地震に強い家を作っていたとしても、耐荷重を超える外壁にリフォームしてしまえば、耐震性は下がってしまいます。
外壁が重すぎてはいけないという話をしてきましたが、気をつけなければならないのが、とにかく軽ければ軽いほどよいという単純な話ではないことです。
お住いの構造や屋根の重さとのバランスも大事になります。
屋根が重く、それに対して外壁が軽すぎてしまうと、地震や強風などで振動が加わった際、屋根に大きく慣性の力が働き、かえって大きく揺れる可能性があります。
外壁のリフォームの見積もりを取る時には、重量の変化について確認をしましょう。
元の外壁の上から新しい外壁を張る 「重ね張り(外壁カバー工法)」 では、当然のこととして重さは増加します。
そのため 「重ね張り(外壁カバー工法)」 で外壁を補修する場合におすすめとなるのが、軽量な金属サイディングです。
次の項では金属サイディングについて説明します。
2-4 軽量な外壁材 「金属サイディング」
外壁材の中で軽量なものを挙げますと、金属サイディングになります。
金属サイディングの中でも製品によって多少の重さの違いはありますが、例を挙げますと、窯業系サイディングの16㎜厚の重さは1㎡で約17.5㎏。それに比べてガルバリウムの金属サイディングは約3分の1程度と言われます。
上でも述べましたが、元の外壁の上から新しい外壁を張る 「重ね張り」 では、当然のこととして重さは増加します。
そのため 「重ね張り(外壁カバー工法)」 で外壁を補修するなら、軽量な金属サイディングを選択することが現実的です。
金属サイディングについて、
「夏は暑く、冬は寒いのでは?」
「雨の日は音が響いてうるさいのでは?」
という誤ったイメージを持たれることがありますが、そんなことはありません。
優れた断熱材と一体化している製品が多く、他の外壁材と比べても断熱性が劣るどころか、むしろ高いくらいです。
またこの断熱材が音も吸収しますので、防音性も発揮し、雨音が気になるということもありません。
デザインに関しても、加工技術や印刷技術が革新的に進歩した結果、窯業系サイディングに劣らぬさまざまなデザインの商品が展開されています。
3.施工の流れ
この章では金属サイディングの 「重ね張り(外壁カバー工法)」 の施工の流れをご案内します。
足場を架設
銅縁取り付け・・・元の外壁に、新たにつける金属サイディングを固定して取り付けるための木材(胴縁)を取り付けます。
補修・・・元の外壁のクラックを補修します。また窓などのサッシ周辺に水切りも取り付けます。
新しい外壁の取り付け
まとめ
以上、この記事では寿命がきてしまった外壁のリフォーム方法である 「張替え」 と 「重ね張り(外壁カバー工法)」 について説明してきました。
いかがでしたでしょうか?
家を建て替えるとなると工事も大規模になりますし、費用も工期も膨らみます。
建て替えると決めるその前に 「張替え」 や 「重ね張り(外壁カバー工法)」 もぜひ検討してみてくださいね。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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「著者情報」
関裕一
東京都足立区出身 1級外壁・屋根調査士・ドローンパイロット
サンセイホーム(株式会社三誠ホームサービス) 最高技術責任者
18歳から塗装職人として2.250件以上の施工に携わる。
塗装業界の歪んだ構造を塗り替えるべく、奇跡の「新時代塗装」倶楽部を主催している。
お家を長く保つアドバイスを、分かりやすくお伝えします。
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