屋根リフォーム3大工法「塗装・カバー工法・葺き替え」の徹底比較
屋根の状況やご予算、今後のライフプランによって最適なリフォーム方法は異なります。
| 比較項目 | ① 屋根塗装 | ② 屋根カバー工法(重ね葺き) | ③ 屋根葺き替え工事 |
| 工事概要 | 既存の屋根材の表面に新しい塗料を塗り、防水性や美観を回復させる。 | 既存の屋根材の上から、新しい防水紙と軽量な屋根材を重ねて張る。 | 既存の屋根材と下地(防水紙など)をすべて撤去し、新しい屋根に一新する。 |
| 費用相場 | 30万〜80万円(比較的安価) | 80万〜250万円(中程度) | 120万〜260万円以上(高額) |
| 工期目安 | 約1〜2週間 | 約3日〜1週間 | 約1〜2週間以上 |
耐用年数 (次のメンテ目安) | 約8〜20年 (使用する塗料のグレードによる) | 約20〜30年 (使用する屋根材による) | 約20〜40年以上 (使用する屋根材による) |
| メリット | ・費用が最も安い ・工期が短い ・騒音や廃材が少ない ・好みの色を選べる | ・葺き替えより費用が安い ・工期が短い ・廃材が少ない(アスベスト処分費削減) ・屋根が二重になり断熱性・遮音性が向上 | ・下地(防水紙・野地板)の点検・補修が可能 ・根本的な解決で安心感が最も高い ・屋根材を自由に選べる(瓦なども可) ・軽量化による耐震性向上が可能 |
| デメリット | ・屋根材や下地の根本的な補修は不可 ・耐用年数は他工法より短い ・劣化が激しいと施工できない | ・下地の点検・補修ができない ・屋根がやや重くなる ・劣化状況(雨漏り・下地腐食)がひどいと施工不可 ・施工できる屋根材が限定される(軽量なもののみ) | ・費用が最も高額になる ・工期が長い ・廃材(アスベスト含む)の撤去・処分費用がかかる |
| 施工不可の主な例 | ・雨漏りが発生している ・屋根材の割れや欠けが多数ある ・下地(野地板)が腐食している | ・雨漏りが発生している(または過去に起こした) ・屋根下地が傷んでいる ・既存の屋根材が瓦(凹凸が大きく重いため) | ・(特になし。ただし建築基準法に準拠する必要あり) |
各工法の特徴とおすすめなケース
① 屋根塗装
「美観の回復と、定期的な予防メンテナンス」
屋根材自体に大きなダメージはなく、主に色あせや軽い汚れが気になる場合、また前回のメンテナンスから10年程度経過した場合の予防保全として適しています。
- こんな方におすすめ:
- 築10年程度で、初めてのメンテナンスを検討している方
- 大きな不具合(雨漏りなど)はないが、見た目をきれいにしたい方
- コストを最優先に抑えたい方
② 屋根カバー工法(重ね葺き)
「コストと耐久性のバランス型。アスベスト対策にも」
既存の屋根材(主にスレート系)の劣化は進んでいるが、下地には大きな問題がない場合に適しています。既存の屋根を撤去しないため、アスベスト(石綿)含有屋根の処分費用を大幅に削減できるのが最大のメリットの一つです。
- こんな方におすすめ:
- スレート屋根(コロニアルなど)のメンテナンスを検討している方
- 葺き替えほどの費用はかけられないが、塗装では不安な方
- アスベスト含有屋根のリフォーム費用を抑えたい方
- 断熱性や遮音性を今より高めたい方
- 15〜20年後には転居や解体の予定がある方
③ 屋根葺き替え工事
「下地から一新。最も確実で長期的な安心を」
屋根から雨漏りを起こしたことがある場合や、下地(野地板)の腐食が疑われる場合は、この工法一択となります。屋根全体を新しくするため、今後20年以上、安心して住み続けたい方に最適です。
- こんな方におすすめ:
- 雨漏りを起こしたことがある、または雨漏りの形跡がある方
- 屋根下地(野地板)の傷みが疑われる方
- 築25年以上経過し、根本的なリフォームをしたい方
- 重い瓦屋根から軽い金属屋根に変更し、耐震性を向上させたい方
- 今後も長く(20年以上)その家に住み続ける予定の方
屋根材の種類と特徴
1.スレート系屋根材
引用:KMEW「グラッサ・シリーズ コロニアルグラッサ」
スレートは、薄く平べったい形状が特徴の屋根材です。 日本の高度成長期に広く普及し、現在の新築建売住宅でも多く採用されています。 製造時期によって性能が大きく異なるため、注意が必要です。 現行品は、過去の製品(第2世代)の弱点を改良したものです。「コロニアルグラッサ」などがあり、耐用年数は25〜30年とされています。比較的安価な点がメリットです。
2.金属屋根(ガルバリウム)
引用:アイジー工業「スーパーガルテクト」
かつての金属屋根(トタン)の「錆びやすい・暑い」というイメージを覆し、現在主流となっている屋根材です。 ガルバリウム鋼板、またはその改良版であるSGL鋼板(ガルバリウムにマグネシウムを加え、耐食性を約3倍に高めた素材)が中心です。 中でも横葺き(断熱材一体型)タイプが日本で最も高い支持を得ております。 屋根材の裏側に断熱材が貼り付けられており、優れた遮熱性・断熱性を発揮します。 「スーパーガルテクト」(アイジー工業)などが代表的で、特に屋根カバー工法や葺き替えで人気です。
3.石粒付き金属屋根(ガルバリウム)(外国製)
出典:Brava Roof Tile
ガルバリウム鋼板の表面に、天然石やセラミックの石粒を焼き付けた屋根材です。 ニュージーランド発祥の「DECRA(デクラ)」などが有名で、外国製が中心です。
石粒のコーティングにより、金属屋根でありながら塩害地域でも利用可能です。 また、石粒が雨音を拡散させる効果も期待できます。 比較的施工がしやすいため、塗装業者や瓦業者が金属屋根を扱う際の入門的な選択肢となることもあります。
製品によって性能差があり、特に熱対策として屋根材と下地との間に厚い通気層を確保できるタイプ(例:「クラシックタイル」)は、熱がこもりにくく推奨されます。一方で、価格重視のかん合式タイプは通気層が薄くなります。
4.アスファルトシングル
表面に石粒を圧着した、シート状の屋根材です。施工が容易で、アメリカではDIYも普及しており、戸建て市場で最大のシェアを占めます。
最大のメリットは、屋根材の中で最も価格水準が低いことです。軽量で、万が一落下しても破片が小さいため、日本の建売住宅やマンションの庇(ひさし)部分でも採用が増えています。
輸入品(特に韓国製)と日本製があり、日本製は国内の基準に沿って専用の接着剤や下葺き材が指定されるなど、より厳格な施工要領が求められる傾向があります。
5.瓦屋根
日本の既存住宅で最も多く採用されている(約50%)屋根材です。 近年は新築での採用は減少傾向ですが、耐久性を重視する注文住宅などで根強い人気があります。
- 陶器瓦(釉薬瓦・いぶし瓦) 耐久性を最重視する場合に最適です。 塗装が不要で色あせず、断熱性・通気性にも優れ、30〜60年と長寿命です。 (注意点:2022年1月以前の建物は、地震や台風対策の固定が不十分な場合があります。)
- 土葺き屋根 土で瓦を固定する過去の工法です。 非常に重く耐震性が低いため、早期の改修(葺き替え)が強く推奨されます。
- セメント瓦(モニエル瓦など) セメント製の瓦で、陶器瓦より安価です。 ただし、耐久性や耐退色性は陶器瓦に劣るため、定期的な塗装メンテナンスが必要です。
6.工場や倉庫で用いる屋根材
工場や倉庫などの大型建築物では、住宅とは異なる専用の屋根材が用いられます。
- 折板屋根(せっぱんやね) 現在の工場・倉庫の主流です。 鋼板を台形(富士山のような形)に折り曲げた金属屋根で、住宅用よりも厚い(0.5〜0.6mm)ガルバリウム鋼板が一般的です。 屋根の頂上から軒先までを1枚の長い金属で施工します。太陽光発電の設置にも適しています。
- 波型スレート かつての主流だった、波「〜」形状の屋根材です。 2004年以前に製造されたものはアスベスト(石綿)を含んでいる可能性が高いため、注意が必要です。 アスベスト含有の場合、葺き替え(撤去)には高額な処分費がかかります。 そのため、既存の波型スレートの上に折板屋根を重ねるカバー工法が主流となっています。